ペットロスとは?症状・注意点など克服するために必要なこととは
#暮らし
大切なペットを亡くし、飼い主さんが心を病んだり、さらには体調を崩し体の病気になったりしたりするケースがあります。このような状態を「ペットロス」といいます。もしかしたら、過去に体験した飼い主さんもいるかもしれません。
ペットと暮らす人なら、誰でも経験する可能性のあるペットロス。今回は、そんなペットロスの症状や注意点、さらには克服するための方法などを解説します。
ペットロスとは
「ペットロス」とは、簡単にいうとペットを亡くしたことによる飼い主さんの悲しみや体験のこと。愛犬を亡くし、悲しむことは誰にでもあることであり、「ペットロス」は多くの飼い主さんが経験しているかと思います。
犬はコンパニオンアニマルであり、家族として迎えられることも多く、平均寿命もどんどん伸びています。ちなみに犬の平均寿命は40年間で1.5倍増え、2022年時点で14.76歳。
(日本経済新聞記事より)
そのため飼い主さんは犬と暮らす人生が必然的に長くなり、亡くした悲しみもより深くなります。こうしたことから「ペットロス」は、長期化する傾向にあるといわれています。
ペットロスの症状は?
飼い主さんによって違いはありますが、抑うつ状態や不眠、疲労感、脱力感、無力感などが挙げられます。突然泣いたり、落ち込んだりして、仕事や勉強が手につかず、精神的に不安定なのも特徴です。さらに進むと食事が取れず摂食障害になったり、幻覚や幻聴が出るようになったり、胃潰瘍などを引き起こすこともあります。
「ペットロス症候群」とは?
「ペットロス」は多くの飼い主さんが経験することではありますが、中には時間が経っても癒されず、長期化・慢性化する人もいます。これを「ペットロス症候群」といいます。
どんな人が「ペットロス症候群」にかかりやすいのでしょうか?事前に知っておくことで、対策ができたり、スムーズに病院にかかったりすることができます。
ほかに頼る人がいない、独り身である
家族がおらず愛犬とだけ暮らしている人は、愛犬が亡くなってしまうと、一人になってしまいます。そのため、ほかに悲しみを分け合う人もおらず、重症化しやすくなります。また、家族がいたとしても、悲しみを分け合えない場合、孤独を感じて「ペットロス症候群」となることがあります。
突然の別れ
事故や事件、突然死などで親しい人と急なお別れをするのは辛いもの。それは愛犬が事故や突然死などで亡くなった場合も同様で、飼い主さんに心の準備ができておらず、深い悲しみ・後悔に苛まれてしまいます。深刻なダメージにより、「ペットロス症候群」に進んでしまう飼い主さんも少なくありません。
「ペットロス」を克服するには
家族である愛犬を失って、つらく悲しいのは、当たり前の感情です。「ペットロス」になるのは、ある意味正常な精神の反応ともいえるでしょう。しかし、どんな悲しみも少しずつ癒していかなければいけません。
さっそく「ペットロス」を克服する方法について考えていきましょう。ここに記した方法はあくまでも基本です。愛犬を亡くした悲しみを癒す方法は、飼い主さんや愛犬によって千差万別、いろいろな方法があります。まずは基本を知り、自分に合った方法を見つけてみてください。
お葬式をおこなう
愛犬の死に際し、葬儀を執り行い、弔ってあげるのはとても大切なこと。愛犬への感謝の気持ちを伝えるものであり、自分の気持ちの整理をつけるためのものでもあります。いろいろな火葬・お葬式の方法がありますので、飼い主さんの納得できる方法で、葬儀を行いましょう。
供養をする
葬儀の後は、供養の方法を考えましょう。方法としては、納骨堂に収める、お墓を作る、手元で供養するなどの方法があります。さらに自宅には小さな仏壇などを設置し、毎日お花を献げたり、好きだったおやつをお供えしたりすることで、少しずつですが癒しを得ることができます。
愛犬の動画を見る
葬儀が終わった後など、時間ができると泣いてしまうこともあるかもしれません。そんな時は、愛犬の生前の動画を見てみましょう。
静止画である画像を見るのは辛くても、動画だと大丈夫だという飼い主さんは意外と多いものです。愛犬が元気に走り回っているやんちゃな姿などを見ると、思わず笑ってしまうことも。
思い出を形にする
愛犬の画像を飾ったり、クッションにしたり、さらに被毛や遺骨の一部をアクセサリーにして身につけたりすることで、愛犬が存在した証を残すことができます。また、愛犬が常に一緒にいてくれるような気持ちが生まれ、安心感を得ることもできます。
身近な人と悲しみを分け合う、相談する
家族と共に愛犬を亡くした悲しみを分けあうことは、飼い主さんにとって大きな癒しになります。つらい気持ちについて話し合い、一緒に泣くということは、一緒に乗り越えるということにもつながります。
運動やおしゃべりをする
少し時間が経てば、エクササイズや友人とのおしゃべりも、気晴らしの一つとなるでしょう。また、愛犬のことを知る親しい友人などに話を聞いてもらうのもケアの一つ。誰かに聞いてもらうことも克服のポイントです。
新しい犬をお迎えする
一周忌などを境にして、新しい子をお迎えするのもペットロス克服の一つの方法です。ただし、あまりに早く次の犬を迎えてしまうと、前の子と比較してしまう場合があります。
これは飼い主さんの心情や新しい犬にとってもよいことではありません。家族としっかり話し合い、検討する必要があります。
「ペットロス症候群」になってしまったら?
「ペットロス」が重症化し「ペットロス症候群」に進んでしまった場合は、紹介したような方法での克服は難しいかもしれません。そんな場合は速やかに医師などの専門家に相談しましょう。また、家族な親しい友人に以下のような症状が長期間見られる場合には、必ず専門家の判断を仰ぐようアドバイスしてください。
- 表情が暗い
- 自分を責めてばかりいる
- 泣いてばかりいる
- 食欲不振
- 不眠、寝つきが悪い
- 倦怠感が強く生活に支障がある
- 吐き気、嘔吐が続く
- 便秘や下痢
- じんましんが出る
不眠・摂食障害などは...
絶望感や不安感が大きく、睡眠障害や摂食障害などが疑われる場合には、すみやかにカウンセラー、心療内科医、精神科医にかかりましょう。放っておくとさらに重症化することがあります。
胃腸の不調などは...
心の不調から胃の痛みや胃潰瘍、腹痛、下痢などにつながる人もいます。そんなときはまずは消化器系の医師を受診し、その後にカウンセラーなどにかかるとよいでしょう。
ペットロスを克服するまでの心のステップ
大切な存在を亡くした場合、それを受け入れる(死の受容過程)には心理学的に5つのステップがあるといわれています。アメリカの学者が提唱したもので、もともとは人間のものですが、ペットロスの克服にも同じ過程が当てはまります。さっそく見ていきましょう。
ペットロス克服の5つの過程
死を受け入れていくためには、次の5つの過程を経るとされています。
- 否定
- 交渉
- 怒り
- 受容
- 解決
「否定」からスタートし、「交渉」「怒り」を経て、そして状況を受け入れる「受容」、最後に自分の心の中での「解決」へと向かうとされています。
「否定」とは?
「この状況(愛犬の死)は嘘だ」「信じられない」という気持ちの状態の頃を指します。亡くなる直前や直後などの現実逃避したくなる初期の心情のことをいいます。これは、精神的なショックからの自己防衛本能だといわれています。
「交渉」とは?
こちらも亡くなる直前や直後などの心情です。「誰か助けてほしい」「自分が身代わりになってあげたい」「寿命を分けてあげたい」など、何かに願うような気持ちのことを指します。
「怒り」とは?
「うちの子が死ぬのは、私がおやつを与えたせい」「獣医が診断を間違えたのかもしれない」など、自分や第三者を含めて怒りが湧く状態のことを指します。
多くの場合、この否定・交渉・怒りを経て、または繰り返して、徐々に受容へと向かっていきます。一方で、自分に対する怒りは後悔となり、「ペットロス」を長期化させることがあります。
「受容」とは?
「受容」とは愛犬の死を受け入れる状態です。この「受容」に至るまでには様々な葛藤があり、数週間でたどりつく人もいれば、数年かかる人もいます。
「受容」の段階では、「愛犬はもういないのに、自分だけ日常に戻ってもいいのか?」と悩む飼い主さんもいるなど、喪失感を最も味わう時期でもあります。しかし、こうした気持ちも「解決」に向けての一歩といえます。
「解決」とは?
親しい存在の死に際し、誰もが最終的に至る心情です。ここまでくれば、「ペットロス」を克服したと言えるでしょう。大切な愛犬のことを忘れず、思い出として愛せるようになった状態です。
愛犬が亡くなった後、無理に仕事を入れるなどスケジュールを一杯にして、すべてを忘れようとする飼い主さんが稀にいます。こういった飼い主さんは、この5つの過程を経ていないため、後から心身に影響が出ることもあります。「ペットロス」は辛く、悲しい期間ではありますが、「解決」に向けて自分と向き合う期間だともいえるのではないでしょうか。
ペットロスを克服する期間は?
ある保険会社の2023年度調査によると、ペットの死に際し、60%以上の人が「ペットロス」になったと回答しています。また「ペットロス」の期間は、1ヶ月程度と答えた人が多い一方、1年以上もしくはまだ続いているという人も15%程度いました。もし「ペットロス」に悩んでいる方がいれば、この期間を目安としてください。
【「ペットロス」の期間アンケート結果】
1ヶ月未満:23.9%
1ヶ月〜3ヶ月未満:22.2%
3ヶ月〜6ヶ月未満:12.3%
6ヶ月〜1年未満:6.1%
1年以上:8.0%
わからない:17.9%
まだ続いている:4.7%
出典:アイペット損保
身近な人が「ペットロス」になったら
家族や親しい友人などが「ペットロス」にかかってしまった場合、どう対応したらよいのでしょうか?励ましとなる対応、NGな対応をそれぞれ紹介しておきます。
「ペットロス」励ましとなる対応は?
「ペットロス」になった人の価値観に合わせ、声かけや行動をしましょう。一緒にそばにいるだけで心が安らぐこともあります。
- 一緒にいて話を聞く
- 一緒に泣く
- 死後の手続きを一緒に行う
- 花や手紙を贈る
「ペットロス」NGな対応は?
「ペットロス」になった人にやってはいけないのは、その人の考えを否定するようなこと。よかれと思って告げた「頑張って」の一言が負担となることもあります。
- 「頑張らないと愛犬が悲しむよ」などと励ます
- 新しいペットをすすめる
- 無理に遊びに連れ出そうとする
「ペットロス」を予防しよう
人間より寿命が短いペットとのお別れは、いつか必ずやってきます。その時に深刻な「ペットロス」にならないために、自ら予防をしておきましょう。
「ペットロス」について学ぶ
「ペットロス」について、本を読んだり、ネットで調べたりして、事前に学んでおくことも重要です。どんな気持ちになり、どう解決できるかをわかっていれば、早く克服することもできるかもしれません。また、「ペットロス」について理解しない人がいることを事前に知っておけば、無駄に傷つくこともありません。
しっかり愛情を注ぐ
愛犬と一緒に過ごせる期間は平均で15年弱。ほとんどの場合、愛犬が先に逝ってしまいます。ですので、その期間十分に可愛がり、愛情を注いであげてください。
また、しっかりと観察し、健康管理なども怠らないようにしましょう。後悔の少ない過ごし方を、ぜひ考えてみてください。
まとめ/ペットロスは時間が解決してくれることもある
犬と暮らす限り、切っても切り離せない「ペットロス」。無理に乗り越えるものでなく、悲しみに暮れながらも、時間の経過と共に受け入れていくものです。自分が5つの過程の中でどの段階にいるのか分からないこともあるかもしれませんが、しっかり泣いて、時間をかけることが、「解決」につながっていきます。
愛犬のことを話せる家族、仲間を作っておくことも克服への糸口となるでしょう。また、ネット上でペットを亡くした方たちのサイトなどを活用してみるのもいいかもしれません。じっくり時間をかけて「ペットロス」を克服し、愛犬のことを笑顔で思い出せる日を迎えましょう。