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犬のフィラリア症予防を徹底解説! いつから?費用は?必要性は?

#健康

犬を飼っている人のほとんどが知っているフィラリア症。“恐ろしい病気”というイメージはあっても、実際に詳しく知っている方は多くはありません。

今回はフィラリア症の予防について、より深く正しく理解をするために、その感染経路や症状について詳しく解説していきます。

フィラリアとは?

フィラリア[Filaria]とは、線形動物門 双腺綱 旋尾線虫亜綱 旋尾線虫目 糸状虫上科[Filarioidea]に属する寄生虫の総称です。『総称』とあるように、フィラリアにも様々な種類があって、人や牛、犬などそれぞれ違う動物を宿主にします。共通してその名のとおり細長い線のような形状をしており、寄生箇所が神経や内臓といった身体の深部であるという特徴から、感染すると失明や慢性発作、最悪の場合は死に至る重篤な症状を引き起こします。

このフィラリアの寄生による疾患を、フィラリア症 [Filariasis]といいます。

フィラリアとは?


犬に寄生するフィラリアは、犬糸状虫[Dirofilaria Immitis]という種類で、日本では『フィラリア』というと、一般的に犬糸状虫あるいはそれによる症状のことを指します。

(本記事でも、以下フィラリア=犬糸状虫として解説を進めます)

フィラリアの大きさ

フィラリアの大きさは、成虫で体長12〜30cm、体幅1〜1.5mmになります。生まれたばかりのミクロフィラリアと呼ばれる幼虫で体長わずか0.3mm、体幅0.006mm。その後脱皮を繰り返して終宿主である犬へ感染する段階でも体長は1mm程ですから、犬の体内で非常に大きくなることが分かります。

フィラリアの寿命

フィラリアは、成虫になるまでに5段階で成長をします。

生まれたばかりのミクロフィラリアがL1(第1期幼虫)、そこから脱皮を繰り返す毎にL5(第5期幼虫)までライフステージが進行します。この「L」というのは「Larva=幼虫」のことで、例えると幼児→小学生→中学生→高校生…のようなものです。

フィラリアの寿命


フィラリアはL3の段階で犬に感染してからおよそ6ヶ月でL5になり、その後約5~7年もの長い期間生き続けます。元宿主の血液内を漂うミクロフィラリアの状態のままでも2年は生きるとされています。

成長するに従って、皮膚下から筋肉、そして血管内に侵入し、最終的には心臓や肺動脈へと移動します。海外では、心臓に大量に寄生することからハートワーム[Heart Worm]とも呼ばれています。

フィラリア症の感染経路

フィラリアを媒介する中間宿主は、主にイエカ属及びヤブカ属などの蚊です。

日本には16種類の蚊※が中間宿主として存在します。

フィラリア成虫に寄生されている犬や猫の血液には、その成虫から生まれたミクロフィラリアという幼虫が大量に漂っています。ミクロフィラリアは吸血によって蚊の体内に取り込まれると、そこで2〜6週間程をかけてL1から感染性のL3の段階まで成長し、その蚊が未感染の犬を吸血した際に吻鞘部からその犬の体内に侵入していきます。

フィラリア症の感染経路


※ 日本でフィラリアを媒介する16種類の蚊:

アカイエカ/コガタアカイエカ/チカイエカ/カラツイエカ/ネッタイイエカ/ヨツボシイエカ/トウゴウヤブカ/キンイロヤブカ/ヒトスジシマカ/ネッタイシマカ/ホッコクヤブカ/アカンヤブカ/チシマヤブカ/カラフトヤブカ/シナハマダラカ/アシマダラヌマカ

フィラリア症の感染率

2001年に発表された全国調査では、正しくフィラリア予防をされた犬の感染率がほぼ0%だったのに対して、不完全予防犬(予防薬の投与忘れなども含む)は34.6%もの犬がフィラリア症に感染していたと報告がなされました。

フィラリア症の感染率


また、予防をせずに夏を越した犬のフィラリア症感染率の調査では

1年目 38%がフィラリア症に感染

2年目 89%がフィラリア症に感染

3年目 92%がフィラリア症に感染

という、フィラリア症の感染力の強さを表したデータもあります。東日本大震災の際に野良化してその後保護された犬の約半数がフィラリア陽性でした。

フィラリア症の症状


フィラリアは心臓や肺動脈に寄生するため、心臓の動きや血液の流れを阻害し、宿主の身体全体に酸素や栄養などが充分にゆき渡らなくなります。

症状の出始めには、

  • 咳を頻繁にする
  • 呼吸が早く浅い
  • 食べているのに痩せてくる
  • 食欲不振
  • 疲れやすい
  • 散歩をしたがらない

などの違和感が出ます。

フィラリア症の症状


さらに症状が進むと、

  • 貧血
  • 血尿
  • お腹が不自然に出てくる(腹水貯留)
  • 呼吸困難

最終的には、

  • 肝障害
  • 腎臓障害

に及び、呼吸困難と共に死に至ります。


しかし、先出のとおりフィラリアは成長に従って犬の体内を移動して、心臓や肺動脈へは最終段階で移動するので、感染初期から数年間はほとんどの場合が無症状です。

症状が出たときには既に重症だった、というケースも少なくありません。

フィラリア症の症状


いかがでしょうか?フィラリアの感染力と症状を改めて知ると、とても恐ろしい感染症であることがお分かりいただけましたよね。ここからはフィラリアの予防と治療方法について述べていきます。

フィラリア症の予防方法

フィラリアは蚊が媒介する寄生虫ですので、その犬が決して一度たりとも蚊に刺されない生活をおくっているのであれば感染することはありません。ですが、毎日のお散歩時や、どこからか家の中に侵入して来る蚊から愛犬を防ぐことはほぼ100%不可能です。

フィラリア症の予防方法


ですので、薬での発症予防を行います。薬によって、体内に侵入してしまったフィラリアが成長する前に駆除するのです。フィラリア予防薬は、厳密には“フィラリア駆虫薬“です。

覚えておかなければならないのは、“フィラリア予防薬は、成虫には効果を発揮しない”ということです。フィラリア(犬糸状虫)の成虫に対して効果のある家畜用の薬剤が1つだけあるのですが、犬への投与は副作用やリスクが大きかったため、2004年に犬用としての製造は中止されています。

後に述べますがフィラリアに感染した際の治療には非常に大きなリスクが伴います。愛犬のために、きちんと投薬期間と手順を守って予防をしましょう。

フィラリア症の予防薬の効果

フィラリア症の予防薬の効果


フィラリアの予防薬は、フィラリアが犬の体内に入り込んでから皮下で成長してL4(第4期幼虫)になり、L5(第5期幼虫)として血管内へと移動し始めるまでの約3ヶ月間に対してのみ、つまりL4に対してのみ(!)駆除効果を発揮します*。

*薬剤によってはL3(第3期幼虫)にも効くものも存在します

*予防効果以外に血液内のミクロフィラリアも死滅します

フィラリア予防薬を飲ませるのはいつから?

先述のとおり、フィラリアの予防薬が効果を発揮するタイミングは非常に限定的です。

ですので、蚊の発生するシーズンは勿論、蚊が居なくなってからもしばらくは投薬を続ける必要があります。自己判断で投薬を止めてしまうと、駆除を免れたL3(第3期幼虫)が冬の間に静かに体内で成長をしていってしまうという最悪のケースもあり得るのです。

蚊の活動には季節よりも気温が大きく関係しているため、暖かい地域であれば季節を問わず予防が必要です。近年は温暖化の影響で、蚊の活動時期が長くなっているため、都内でも5月〜12月頃までと、フィラリア予防薬の投薬期間は長くなっています。

フィラリア予防はいつからいつまでが有効か?

フィラリア予防はいつからいつまでが有効か?


フィラリアが怖いので、と中には通年フィラリア予防薬を愛犬に与える人もいます。確かに、一部の蚊は越冬するものもいますが、蚊の体内でのミクロフィラリアの成長は外気温に依存し、平均気温が14℃以下だと成長できません。ですので、平均気温が14℃以下になる冬の期間にフィラリアに感染する可能性は非常に低いのです。フィラリア予防薬が身体に及ぼす害は限りなく少ないとはいえ、飼い主の安心のために必要のない薬を与えることはせず、休薬期間を設けましょう。

フィラリア予防薬はどこで買える?

フィラリアの予防薬は、動物病院で処方してもらえます。ネットショップなどで販売されていることもありますが、万が一、既に成虫が寄生していて体内に大量のフィラリアがいる状態で投薬を行うと、ショック反応(ミクロフィラリア反応)を起こす場合があり、命にかかわる危険があります。

そのため、初めてフィラリア予防薬を使用する場合や休薬期間明けには、動物病院でフィラリアの感染がないかを検査して確認することを推奨します。

フィラリア予防薬はどこで買える?


また、一部のコリー系の品種(ボーダーコリー/シェットランドシープドッグ/オールドイングリッシュシープドッグ/シェパード含む)の中には、フィラリア予防薬に含まれる成分が遺伝的に合わない体質の犬がいるので、飼い主の自己判断で薬を選ぶのはおすすめしません。

フィラリア予防薬の種類一覧

フィラリアの予防薬には、投薬方法によって様々な種類があります。動物病院によっては、複数の製品を取り扱っているところもあり、何を選ぶべきか迷ってしまう人もいるかと思います。薬剤によってそれぞれ成分や与え方が異なるため、犬種や性格、体質を獣医師に相談して合ったものを処方してもらいましょう。

錠剤タイプのフィラリア予防薬

一般的なお薬のイメージのとおり、シンプルな錠剤です。成分として、イベルメクチンやミルベマイシンなどの駆虫成分が含まれています。直接飲ませたり、フードやおやつに混ぜて与えたりします。

錠剤タイプのフィラリア予防薬


ミルベマイシンA錠、パナメクチン錠、モキシデック、アズバスカ錠など

錠剤タイプのメリット

成分が薬剤のみなので、食物アレルギーのある犬や皮膚がデリケートな犬にも安心して使えます。他の予防薬と比べると価格が比較的安いのも特徴です。特に投薬用量が必要な大型犬には、コスト面で大きなメリットがあります。

錠剤タイプのデメリット

デメリットとしては、お薬を上手く飲ませる自信のない方や、飲んだふりをして隠れてこっそり薬を吐き出してしまうタイプの犬にはおすすめできないことです。フィラリア予防薬はきちんと連続投与することで効果を発揮するお薬ですので、心配な方は別のタイプを選びましょう。

チュアブルタイプのフィラリア予防薬

薬剤が練り込まれたおやつ状の製品です。クッキーやお肉を固めたような見た目で、犬の食いつきを良くする工夫が施されています。

チュアブルタイプのフィラリア予防薬


ネクスガードスペクトラ、モキシハート、イベルメックなど

チュアブルタイプのメリット

通常のおやつと同じく口腔内で噛んで飲み込むことを想定されているため、味に敏感な犬や、薬に警戒してしまう犬にも比較的簡単に与えることが可能です。

チュアブルタイプのデメリット

おやつ状の部分に鶏肉や牛肉、小麦が含まれていることが多いため、食物アレルギーがある犬に与える場合は原材料が何か注意を払う必要があります。心配な場合は、動物病院で必ず相談するようにしましょう。

スポットタイプ(滴下薬)のフィラリア予防薬

駆虫成分の含まれた液体を犬の首に塗布し皮膚から吸収させる薬剤です。セラメクチンやモキシデクチンなどの有効成分があります。

スポットタイプ(滴下薬)のフィラリア予防薬


レボリューション、アドボケートなど

スポットタイプのメリット

錠剤やチュアブルを受け付けない犬や、食物アレルギーがある犬にも安心して使用できます。口から吐き出すことがないので、投薬を確実に行えることが大きなメリットです。

スポットタイプのデメリット

毛を掻き分けて皮膚に直接滴下する必要があるため、触られることが苦手な犬や、わずかな時間でもじっとしていることができない犬には塗布が難しい場合があります。

注射タイプのフィラリア予防薬

動物病院にて皮下注射で注入するタイプです。

注射タイプのフィラリア予防薬


プロハート12

注射のメリット

他の予防薬と違って12ヶ月間効果が持続するものもあるため、年に1回の注射で通年予防が可能です。投与忘れのリスクを無くし、確実に予防可能なことが最大のメリットです。

注射のデメリット

投薬量は投与時の体重に基づいて決まるため、成長期の犬には薬剤の効き目が安定しないため向いていません。

フィラリア予防薬の副作用

フィラリア予防薬を与える際に、副作用が心配という飼い主も多いでしょう。ほとんどの場合は問題が起こることはありませんが、薬剤との相性もあるので新規の薬剤を使用する場合や、休薬期間明け、体調面で心配な場合は、投薬の時間を夜ではなく午前中にするなど、万が一の際に動物病院へ連れて行くことができる時間帯を選びましょう。また、投薬を行う日は予定を空けて、すぐ側で様子を見られるようにしておくと安心です。

フィラリア予防薬の副作用としては以下のようなものがあります。

アナフィラキシーショック 

フィラリア予防薬に限ったことではありませんが、どの薬や注射などによっても起こり得る副作用の一つがアナフィラキシーショックです。投薬から間もなく症状が現れることが多く、ぐったりしたり、痙攣したりするなどの異変が見られます。

その他、次のような副作用が現れることもあります。

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • よだれ
  • 倦怠感

実際に、コリー系犬種の遺伝子には一部の薬剤に対して反応が起こることが報告されていますので飼い主の自己判断で薬を選ばないようにしましょう。

フィラリア予防の費用目安は?

フィラリア予防の費用目安は?


フィラリア予防薬は対象犬の大きさによって投薬量に大きな差があり、費用もそれに比例します。また、予防薬の効果がフィラリア予防のみに限定されるものと、ノミダニ予防もできるものなどによって価格差があります。

  • 経口薬1回あたり800円〜4,000円ほど
  • 予防注射1回あたり8,000円〜20,000円ほど
  • フィラリア検査1,500円〜10,000円ほど

フィラリア症の検査方法は?


フィラリア症に感染しているかどうかの検査は、採血検査によって血中のフィラリア反応を見る方法があります。

直接法

血液を顕微鏡で目視し、ミクロフィラリアの虫体を確認する方法。検出率は50%程。オカルト感染(後に解説)などミクロフィラリアの発生条件などで正確な結果が出ないことがあります。

集虫法

一定量の血液を遠心分離器にかけるなどしてミクロフィラリアの有無を調べる方法です。直接法に比べると、より多くの血からデータを採取するため検出率は高くなります。

抗原検査

血液を薬剤と反応させ、フィラリア成虫から出る物質を抗原抗体キットに反応させる方法。検出率は90%以上とされるが、オスのみの寄生、感染後6ヶ月以内だと検出されないこともあります。

集虫法以外は、採血量はごく少量で済みますので、小型犬や老犬であっても身体への負担はほぼありません。

オカルト感染とは何?

フィラリア検査をするにあったって注意しなければならないのが「オカルト感染」です。オカルト感染とは、体内にフィラリア成虫が寄生しているにも関わらず、直接法や集虫法による検査時に血液中からミクロフィラリアが検出されない状態のことを指します。

オカルト感染とは何?


原因としては、下記が考えられます。

  • 寄生しているフィラリア成虫がミクロフィラリアを産めない状態の時、つまり寄生している成虫の性別がオスもしくはメスだけの状態
  • フィラリア予防薬を与えるタイミングを誤ったことによりミクロフィラリアのみがその予防薬によって駆虫されてしまった状態
  • ミクロフィラリアの検出数が非常に少なく反応が出なかった状態

血液中に漂うミクロフィラリアの数は、時間帯によって変動します。

ミクロフィラリアの目的は、蚊に吸血されて別の宿主の元へ移動することですので、蚊の少ない日中は身体の奥の方に潜んでいて、蚊の活動が活発になる夕方から明け方にかけて末梢血管まで出てきます。日中に検出されるミクロフィラリアの数は本来の1/6以下とも言われています。おおよそ22時頃が活動のピークの時間帯ですので、動物病院で採血をする時間帯には検出されにくいといった事象が起こり得るのです。

フィラリア症の治療方法

フィラリア症の治療方法


フィラリア成虫に感染してしまった場合の治療方法は、フィラリアの数など感染の度合いや犬の年齢や状態によって3つに分けられます。

薬剤による成虫駆除

薬剤によって死滅した多数のフィラリアが心臓に絡まったり血管に詰まったり、アナフィラキシーショックを起こすなどの危険が多く、犬用の薬剤自体も製造中止になってしまっているので現在はこの治療方法を選択することはほぼありません。

摘出手術(吊り出し法)

外科手術によって直接フィラリア虫体を器具で取り出す方法です。全身麻酔をかけて頸部の血管を切開しなければならず、寄生したフィラリアによって心臓に負担を抱える犬にとって非常にリスクの高い処置となります。さらに、取り残したフィラリアの一部が血管に詰まるリスクもあります。

薬剤による増殖抑制

フィラリア予防薬を長期的に投与し続け、再感染とミクロフィラリアの増殖を防ぎながら成虫の寿命を待つ方法です。フィラリア成虫の寿命は約5~7年ですので、とても長期間にはなりますが、一番リスクが少なく、一般的に採用されている方法です。

しかし、フィラリアが寄生している限り心臓への負担はかかり続けるため、通常の生活をおくれるよう心臓のケアも併せて行っていく必要があります。

いずれの治療方法で駆虫ができたとしても、フィラリアによって傷ついた血管や影響を受けた臓器は決して元通りになることはありません。

実際に、一度フィラリアに感染してしまった犬の平均寿命は、未感染の犬に比べ短くなるとされています。

フィラリア症は予防が大切!

フィラリア症は予防が大切!


ここまで全てお読みいただいた飼い主の方は、フィラリアが愛犬に与える影響の大きさについて、充分すぎる程ご理解いただけたかと思います。

何度も言いますが、フィラリア症は月に1度、決められた日にたった1回薬を与えることで完全に防ぐことができる病気です。愛犬の健康と長生きを願う飼い主がほとんどにも関わらず、最新の調査でもフィラリア予防普及率はまだ100%には至っておらず、フィラリア成虫を保持している犬もまだまだ多くいます。

愛犬と長く健康に過ごすため、フィラリア症の予防は飼い主が必ずすべき責務ともいえるでしょう。



公益社団法人 日本動物病院協会

 https://www.jaha.or.jp
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