保護犬の譲渡会とは?規則やマナーなど分かりやすく解説
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新しい家族のお迎えを検討する際、お迎え場所として候補にあがるのが、保護犬の譲渡会。ペットショップやブリーダーに比べると、まだまだメジャーなお迎え方法とはいえず、「いつどこで開催されているの?」「どうやって保護犬をお迎えするの?」と疑問を感じる人も多いでしょう。
この記事では、保護犬譲渡会の規則やマナーなどについて、詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてくださいね。
保護犬の譲渡会とは?
譲渡会とは、行政や民間の保護団体が保護した犬と、新しい飼い主さんをつなげるイベントのこと。広い会場を貸し切って開催されることが多く、実際に保護犬たちと触れ合い、自分との相性を確かめることができます。また、主催者に保護犬の性格や健康状態などをその場で尋ねることも可能です。
ペットショップからお迎えする場合とは異なり、保護犬の里親になるにはさまざまな条件があります。保護団体が定める条件をクリアすれば、保護犬を家族として迎えられるという仕組みです。具体的な条件についても詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
保護犬の里親になる方法とは?
イベント形式の譲渡会については冒頭で説明しましたが、保護犬と出会うには、ほかにはどんな方法があるのでしょうか。ここでは、譲渡会以外で保護犬の里親になる方法を紹介します。
保健所でお迎えする
自治体や動物愛護センターが運営する保健所でも、保護犬の譲渡をおこなっています。環境省の「収容動物検索情報サイト」では、全国各地の自治体によって保護されている犬たちの情報を確認できるので、お住まいの地域の情報を検索してみてくださいね。保健所から保護犬をお迎えするには、以下のような手続きが必要です。
- 来所前の面接
- 譲渡前講習会の受講
- 専用書類の記入
自治体によって手続きの内容・方法は異なるため、事前によく確認しておきましょう。
保護犬カフェで出会う
譲渡会とカフェが一体となった「保護犬カフェ」という施設もあります。ドリンクを飲んだり食べ物を食べたりとカフェでくつろぎながら、保護犬たちと触れ合うことができますよ。
カフェの売上は保護団体の活動費など、保護犬のために使われることが多いです。カフェに行くだけで保護活動に貢献できるのも、大きなメリットだといえます。
里親募集サイトを利用する
インターネット上には、里親募集の情報を掲載しているサイトが多数存在します。NPO法人やボランティア団体が運営していることが多く、最近ではSNSで募集を出している保護団体も。保護団体と里親をつなぐ、専用のマッチングサイトなどもあります。
多くの場合、里親募集サイトには保護犬の写真・健康状態などが掲載されています。気になる子を見つけたら、サイトからお問い合わせも可能です。直接会場に足を運ぶ譲渡会と比べて、気軽に保護犬を探せるのが里親募集サイトの特徴だといえます。
厳しいって本当?保護犬を引き取る条件について解説
譲渡会とペットショップの大きな違いは、お迎えの条件が定められていることです。里親制度について調べると「条件が厳しい」との情報をよく目にするため、「実際のところどうなの?」と気になる人も多いのではないでしょうか。ここでは、保護犬の譲渡条件について詳しく解説します。
公的機関の譲渡条件
保健所や動物愛護センターなど、公的機関が定める譲渡条件の例は、以下のとおりです。
- 家族全員の同意を得ること
- 避妊・去勢手術を受けること
- 狂犬病予防ワクチンを接種すること
- マイクロチップや鑑札装着などの法律の遵守
- 家がペット飼育OKである証明書の提出
- おもな飼い主が高齢ではないこと
- ひとり暮らしの人は保証人を立てる
- 保護犬を営利目的に使用しない
条件が多いように感じますが、これらは保護犬だけではなく、ペットショップからお迎えする際にも同じことがいえます。愛犬と一緒に暮らしていくうえで、必要最低限の内容だといえますね。
民間保護団体の譲渡条件
民間の保護団体の場合、譲渡の条件は団体によって大きく異なります。公的機関よりも厳しく設定されていることが多く、条件の例は以下のとおりです。
- 保護団体による自宅の確認や指導を受けること
- 譲渡後も犬の状態を定期的に報告すること
- 必ず室内で飼育すること
- 迷子札を常に装着すること
- お散歩の際はダブルリードにすること
- 1kgあたり1,000円以上の高品質なドッグフードを与えること
中には、飼育環境を確認するために、保護団体による家庭訪問をおこなう場合もあります。
保護犬を迎え入れるメリット
「保護犬」と聞くと「人に懐きにくいのでは?」と、マイナスなイメージをもってしまう人もいるかもしれません。やむを得ない事情で前の飼い主さんとお別れしたなど、犬が保護される経緯はさまざま。
必ずしも「保護犬=飼いにくい子たち」ということではありません。ここでは、保護犬の里親になるメリットを紹介します。
保護犬の家族になり、殺処分の可能性を減らせる
新しい家族が見つからなかった保護犬は、残念なことに殺処分の対象になってしまう可能性も。保護犬の里親となれば、殺処分になる可能性を軽減できます。
環境省のデータによると、2022年4月から2023年3月にかけての犬の殺処分数は、2,434頭。殺処分されてしまう犬の数は年々減少し、新しい家族のもとに譲渡される数は上昇していますが、まだ命を失う保護犬たちも数多くいるのが実情です。保護犬たちの新しい家族になり救える命が増えることは、譲渡会を利用する最大のメリットだといえるでしょう。
ペットショップ・ブリーダーに比べて費用がかからない
譲渡会を利用して保護犬をお迎えする場合、費用を比較的安価に抑えられます。ペットショップやブリーダーさんからお迎えする場合、1頭あたりおよそ10〜30万円ほどの費用が必要です。犬種や血統・お店によっては、それよりもさらに高額になることも珍しくありません。
対して、保護犬をお迎えする際は、ペットそのものに対しての費用はかかりません。「譲渡費」として、ワクチン接種や検査のための費用を支払うことはありますが、数万円以内に収まるのが一般的です。
保護犬の性格・体の大きさを把握しやすい
里親を探している保護犬たちは、すでに成犬である場合が多いです。そのため、「成長後の姿や性格が予想できない」といった心配は必要ないといえるでしょう。また、成犬は子犬に比べて性格も落ち着いていることが多く、体も完成しているので病気やケガのリスクが低いというメリットもあります。
しつけができている場合が多い
前の飼い主さんがしっかりとしつけをおこなっていた場合、「おすわり」「待て」などの基本的なコマンドは、すでに覚えている子も多いです。保護団体によっては、スタッフがひと通りのしつけをおこなっている場合も。
しかし、野犬として外で暮らしていた保護犬の場合は、改めてしつけをする必要があります。保護犬の生い立ちによっては一筋縄ではいかないこともあり、飼い主さんにも根気が必要です。
譲渡会で保護犬をお迎えする手順とは?
ペットショップやブリーダーさんと比べ、決して身近とはいえない保護犬の譲渡会。気に入った子をお迎えするにはどのような手続きが必要なのか、どういった手順を踏むのか気になる人も多いのではないでしょうか。譲渡会で保護犬をお迎えする際の、大まかな手順は以下のとおりです。
- 譲渡会を予約・参加
- 実際に保護犬と会い、相性などを確認
- 保護団体による飼育環境・条件のチェック
- 譲渡のための講習を受ける
- 契約書を交わす
保護団体によっては、数日間保護犬と一緒に暮らしてみるトライアル期間を設けている場合もあります。トライアル中は、保護団体のスタッフも自宅に訪れて飼育環境などをチェックし、里親としてふさわしいと認められると正式に譲渡される流れです。
また、譲渡後に保護犬の様子を確認するための家庭訪問が実施されることも。多くの手順を経て、晴れて里親として保護犬をお迎えできます。
保護犬譲渡会でのマナーや注意点とは?
保護犬の譲渡会は、新しい家族に出会えるだけでなく、社会貢献につながるなど大きなメリットがある試みです。しかし、譲渡会の利用にはいくつかの注意点があります。ここでは、保護犬の譲渡会に参加する際のマナーや、気をつけるべきポイントを紹介します。
事前予約をする
保護犬の譲渡会に参加するには、多くの場合、事前予約が必要とされています。予約の有無や予約方法は保護団体によって異なるため、事前によく確認しておきましょう。
「せっかく行ったのに参加できなかった」となると、時間を無駄にするだけでなくスタッフの人を困らせてしまう可能性も。トラブルを防ぐためにも、ホームページなどでよく確認してみてくださいね。
許可なく保護犬を触ったり、大声を出したりしない
無断で保護犬に触ったり、大きな声を出したりするのはNGです。犬たちと触れあいたい場合は、保護団体のスタッフに声をかけましょう。
保護犬たちにはさまざまな過去があり、虐待・暴力を受けた経験のある子もいます。そのような犬は人間に対しての警戒心・恐怖心が強く、急に触られると威嚇したり、噛みつこうとしたりすることも珍しくありません。自分がケガをするだけでなく、保護犬に対してストレスを与える原因にもなり、双方にデメリットがあるため絶対に避けましょう。
また、大きな物音を立てると、怖がってパニックを起こしてしまう犬もいます。譲渡会の会場では大声を出したり走り回ったりすることないよう、十分に注意しましょう。
条件をクリアしていても、お迎えできるとは限らない
厳しい譲渡条件をクリアしたとしても、必ず保護犬をお迎えできるとは限りません。同じ犬のお迎えを希望する人がほかにもいた場合、よりよい条件の人が飼い主として選ばれます。また、兄弟犬の場合はどちらか片方だけでなく、兄弟同士を一緒に譲渡できる人が優先される可能性が高いでしょう。
純血種とは限らない
近年ミックス犬が注目を集めてはいますが、ペットショップで見かける犬たちは、圧倒的に純血種の子が多いですよね。しかし、譲渡会で出会う保護犬たちは、必ずしも純血種とは限りません。純血種の犬もゼロではありませんが、ペットショップのように好きな犬種を選ぶのは難しいのが実情です。
しかし、一般家庭で家族として一緒に暮らすぶんには、血統はそれほど重要な問題ではありません。純血種・雑種に関わらず、心から「一緒に暮らしたい」と思える子を探してみてくださいね。
時間をかけて信頼関係を築く
保護団体によって保護されている犬たちは、子犬よりも成犬の方が多いです。生後3週間から生後3か月半のあいだは「社会化期」と呼ばれ、あらゆるものごとに順応しやすい傾向があります。
社会化期を過ぎてしまった成犬は、子犬に比べてしつけが入りづらくなる傾向があります。過去にトラウマを抱えている子の場合は、新しい飼い主さんに心を開いてくれないこともあるでしょう。保護犬を迎え入れる際には、ゆっくりと時間をかけて信頼関係を築いていかなければならず、飼い主さんにも根気が必要です。
保護犬譲渡にかかる費用と、譲渡費が必要な理由
保護犬の譲渡を受けるには、保護団体に譲渡費用の支払いが必要となる場合があります。保健所や動物愛護センターなどの公的機関は1万円程度、民間団体の場合は3〜8万円程度が一般的です。費用は団体によって大きく異なるため、事前にホームページなどで確認してみましょう。
譲渡費用はおもに、保護団体の運営費や保護犬のお世話にあてられます。ボランティアで運営している保護団体も多く、ギリギリの資金で活動していることも珍しくありません。
そのような中でも、新しい家族が決まるのを待っている保護犬はたくさんおり、譲渡費はひとつでも多くの命を救うために欠かせないものなのです。公式ホームページで譲渡費の収支を公開している団体もあるので、ぜひ具体的な内容を確認してみてくださいね。
保護犬をお迎えするために必要な準備
保護犬と一緒に暮らしていくには、どのような準備が必要なのでしょうか。ここでは、保護犬のお迎えにあたって整えておきたいことを紹介します。保護犬に限らず、愛犬と一緒に暮らすすべての人にいえることなので、ぜひ最後まで目を通してくださいね。
最後までお世話をする心構え
新しい家族を迎え入れるうえでなにより大切なのは、「最後まできちんと面倒をみる」という、飼い主さんの心構えです。これは保護犬に限ったことではなく、ペットと一緒に暮らしていくうえでいちばん重要なことだといえます。
急な病気やケガで、深夜・早朝に病院へかけこむことになったり、ときにはイタズラをしたり言うことを聞いてくれなかったりして、イライラしてしまうことがあるかもしれません。そういったことも含めて、家族として最後まで一緒に暮らしていけるか、お迎え前によく検討してみてくださいね。
安心・安全な生活環境
以前は愛犬を屋外飼育する家庭も多くありましたが、近年は室内での飼育が推奨されています。屋外飼育は脱走や野犬とのトラブルの可能性があるほか、夏場は熱中症のリスクも考えられるため、おすすめできません。
安心・安全に過ごせる室内での生活環境を用意してあげましょう。賃貸や集合住宅の場合、自宅がペット飼育可能な物件かどうかも、必ず確認してくださいね。
ペット不可の物件で犬の飼育をしてしまうと、物件管理人とのトラブルが発生するほか、引っ越しを強いられて愛犬とお別れをしなければならないケースも。飼育環境については、譲渡条件に必ず定められている項目であり、証明書の提出が求められることも多いです。愛犬のためにも、決まりは必ず守りましょう。
お世話をするのに十分な経済力
愛犬と一緒に暮らしていくには、さまざまな費用がかかります。保護団体に支払う譲渡費はそれほど高額ではないものの、犬のお世話にかかる費用はそれだけではありません。
愛犬のお世話にかかる費用は、平均で月間1〜3万円ほど、年間20〜30万円ほどだといわれています。万が一大きな病気などで入院が必要になった際には、高額な医療費がかかることも。「費用が足りなくて満足な暮らしを提供できない」ということがないように、経済面についてもよく検討してみてくださいね。
新しい家族のお迎えに、譲渡会を利用してみよう
譲渡会の会場には、新しい飼い主さんを待っている子たちがたくさんいます。ペットショップやブリーダーからお迎えするのもよいですが、ぜひ一度、譲渡会へ足を運んでみてはいかがでしょうか。保護犬の新しい家族になることで、大切な命がひとつ救えるかもしれません。